シェヘラザードの本棚

物語同士のつながりが好き

第一回 天国と地獄~サイコな2人~ あなたが私で私があなた 

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 ついに始まりました!!天国地獄

正義感が強いが突っ走ってしまう刑事の望月彩子と新進気鋭経営者だが裏の顔はサイコパスシリアルキラーの入れ替わり物語。

第一回は殺人者がいるという緊張感を感じながらもどこかコメディ感が漂ってました。

なんていうか、まったりた羊たちの沈黙?みたいな。

なにより綾瀬はるかさんと高橋一生さんの演技がやはりすごくて次へのひきが強かったですね。

 

さて今回の記事でもいくつか気になる点があったので書いておこうと思います。

 

<球体とサイコパスとしての日高とは?>

まず気になったのは作品全体にちりばめられた球体というモチーフ。

 

望月彩子と日高陽斗の名前の中に「月」と「日」

②日高が経営する会社名が「Co Earth」(地球)

③殺害道具が丸い石。

④被害者の手のひらに直径記号の「Φ」が書かれている。

(これはまだこの意味であってるかわからない。) 

 

 

以上から少なくとも日高はなにかしら丸い物にたいして思い入れがあるのではないか?

と思います。犯行道具と思われる石も捨ててませんし。

(なんで捨てないなんでしょうね?他は焼却処分してたのに。)

 

そしてまだ二件しか明らかになってませんが彼の起こしたと思われる事件は

 

「七番町デンデン社長宅殺人事件」と「横浜法務省官僚殺人事件」

 

この二つの被害者の傾向をみると社会的に地位が高い職についた男性。

彼らは殺された後に生前の彼らの職業にまつわるものを口に入れられています。

前者はパチンコ玉。後者は六法全書

 

ここまでなんちゃってプロファイリングをしてみて思うんですが、日高のアメリカ時代に起きた連続殺人事件をは手段とターゲットが違います。

①共犯者がいる。(現在失踪中)

②強姦殺人である。

③被害者は十代のまだ学生の少女。

 

 

それをふまえて考えられるのは二点。

 

①このアメリカ時代にシリアルキラーとして目覚めて、共犯者を誘導して殺させた。

(この場合直接関わったか、ただ誘導したかどうかはわからない)

②まったく関わっていなく冤罪。

 

 

どうなんでしょうね。日高は自己完結して他者を挟まない人間に見えるので共犯するタイプに見えなくて。

そんな彼が入れ替わりによって彩子という他者に初めて人生に介入されたというメタ的な見方もあるんですが。

まぁ、この辺は回が進むのを待ってみようと思います。

 

<彩子と表裏の四人>

彩子の周りにいる人間の主要メンバーは

日高陽斗 サイコパス殺人鬼

渡辺陸  同居人

八巻英雄 部下

河原三雄 主任

 

彼ら四人は彩子とは立ち位置が色んな意味で対極にいます。

 

日高とは刑事と殺人鬼いう追う者と追われる者。

陸はのんびり働きお金はあまりない人で彩子はバリバリ働いてお金はそこそこ。

英雄は仕事版の陸と同じような立ち位置でのんびりマイペースで出世に興味ない。

(だが仕事自体はちゃんとやっている)で反対に彩子は猪突猛進で仕事に取組み、出世欲がある。

河原はダーティな手を使ってでも結果を残し、彩子は手段が正攻法。

 

彼ら四人の関係性で今一番興味あるのは河原。

本質的にはきっと似た二人なじゃないかなと思います。

両者ともに組織のルールから外れがちな行動をとる傾向があり根っこには承認欲求と同じくらいの正義感がある。

ただ、違法捜査だとしても組織への還元力が河原にはあるので黙認されてるだけでしょう。

二人は上手くいけば王道と邪道という補完関係にもなれるのではないでしょうか?

いまのとこは互いへの同族嫌悪が邪魔して険悪ムードですけどね。

彼らの関係性が入れ替わりによってどうなっていくのでしょうか?

 

<余談>

他にも気になるのは殺人シーンと焼却炉の証拠隠滅シーンで顔をぼかしているとこ。

十中八九、犯人は日高なんですけどなにか意味がある?

日高じゃない線もあり??

うーん。謎は深まるばかり…。

 

 

 

 

 

 

 

新年の挨拶と雑記2021

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明けましておめでとうございます。

旧年中このブログを更新してたとはとても言えませんが、訪問してくださった方には感謝でいっぱいです。
今年はもう少し更新頻度を初心に帰り増やしていこうと思います。出来れば。

 

コロナと共にある日常は薄氷の上を歩いてるようで、エンタメを楽しむ際にもなんだか薄いが破れにくい膜があるようでした。
この感覚自体は私の受け止め方の問題で、このような状況でも変わらず素晴らしいエンタメを届けようとする製作陣の方々には頭が下がりますし、例え膜があったとしても伝えてくる熱が膜ごしにも感じられます。
時としてその膜が毛布のようで自分がその不思議な暖かさで包まれてるようでした。

 

さてさて去年触れた物語についてちょこっと。
つい最近だと「岸辺露伴は動かない」が良かったですね~。
感想はtwitterでばんばん言ってたんでここでは割愛させて頂きますが。
露伴を演じた高橋一生さんについて少しお話を。
高橋さんはキャラクターを演じている時でもそのキャラの見せている表面的な部分とその仮面の下に隠れている人間性がちゃんとあるように感じられるんですよね。
だけど見えているのはそのキャラの氷山の一角といいますか。
多分視聴者としてはその山の峰だけなんだけど、ちゃんと麓まであるんだろうなと感じられます。

 

そんな高橋さんが今月のTBSのドラマ「天国と地獄~サイコな二人~」に出るのめちゃくちゃ楽しみすぎますね。
脚本は森下佳子さんですし。森下佳子さんですし!!
サイコパス殺人鬼を演じるということですけど「サイコな二人」ってとこからすると綾瀬はるかさんもサイコなとこがあるんじゃないかなぁ?
と今からあーやこーや言ってワクワクです。

 

あと「エール」とグレプリこと「GREAT PRETENDER」も面白かったですねぇ。
二つを同時進行で楽しみました。

 

 

 というのもエールの裕一君があれよあれよと自分の音楽家の才を発揮する場所が戦時歌謡だった事とグレプリでキャラクター達がいつのまにやら気づけば社会的に「悪」といわれる場所に立っていたことが、シンクロしていったとこがあったからなんですよね。
善悪二元論とか悪にも理由があるってより、なんか一生懸命生きてたらそこに場所にいつのまにかいた。
あ~、これは誰にでもそれは起こりうることなんだなぁと。
この誰にでも起こるという事はつまり出会いや環境によっては人はどうとでもなるという事。
この辺は「MIU404」のピタゴラスイッチによる「分岐点」のようでもあります。
かといってその「分岐点」を左右するものが国や社会構造のようなマクロまで及ぶとミクロレベルでは変えるが不可能に近くて。
うーん。この辺の感覚はもう少しこれら掘り下げていけたらなぁとと思います。

 

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なんか新年の挨拶にしてはまただらだらと語ってしまいましたが今年もよろしくお願いします。

 

HOMELAND シーズン8~この世界の鮮やかな捕虜であり続ける~

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*ネタバレ注意

ファイナルシーズンまで見終わりました。感無量です。本当に傑作でした。
この作品自体の事は前に記事を書いた事があり、その終着点として最高のものとなったと思います。

 

scheherazade.hatenablog.com

 

主人公のキャリーが愛したブロディと同じ立場で在り続ける、つまり転向にしたと見せかけ、裏切者という汚名を背負ってでも国に尽くすという彼女らしいものでした。

この選択に彼女の今までの諜報員としての人生が以下に詰まっています。

 

①(国内外の)敵から自国を守るために身を投げ出すほどの献身さがあること。
②なのに国及び組織の奴隷にならず自身の正義を貫ける強さがあること。

 

この①と②という、ともすれば相反するようなものが彼女の中で成り立っています。
なぜなら国の命令にいつも忠実であろうとする時に必ずしもそれが自身の正義と同一かといえば違うからなんですよね。

 

国が「やむえない犠牲」と政策や戦略のために個を犠牲にしていくことはどこでもよくあることですが、
だからといってそれに対してなかなか折り合いがつくものではないですし、そこに葛藤が生まれるのは当然の事です。
(これについては議論が必要なんですけど話からずれてくるんでちょっと脇におきます。)

 

えっとですね、それでそういう葛藤の中でブロディやクインは孤独に苦しんでいる人だったんですよね。
そしてキャリーはその葛藤を抱えてもなお、前に進める強さが非常に強い人でした。
もちろんブロディやクインも強い人達ですが、ものすごく「死」に近いところにいたというか、どこか破滅的な匂いがありました。
だからこそ彼ら二人はキャリーに惹かれたのでしょう。
というかその葛藤は自国だけではなく敵国の諜報員ももっているので、
皮肉にも彼らもまたそういうキャリーの強さに惹かれるんですよね。

 

そしてその強さとそれを支える能力を誰よりも信頼しているのがキャリーの師匠であるソールでした。
もちろんその信頼が揺らぐことはあっても絶対的な絆がそこにあります。
その絆は最初からあったというより、ここまで辿りついた。
彼女達のこれまで積み重ねが確かに昇華されたものだったと思います。

だからこその最終回ののラスト5分です。

 

なにより師匠であるソールすらその瞬間まで騙しきったキャリーは弟子として、

彼をここで超えました。
最後のシーンでキャリーが青白い光に包まれていくシーンがあるんですけど
あれですよね、ロシアの赤と対照的な青つまり祖国に心はあるという演出ですね。きっと。
それは本当にに心にくるものでした。

 

キャリーはこれからも国同士の残酷で冷たい戦いがある世界で、鮮やかに生きていくのでしょう。

確かな絆とともに孤独な戦いの中で独りではなく。

 

<余談>
キャリーは確かにヒーロー〈英雄〉なんですけどなんでそこまでするのか?
ってのは最後の最後までまでわかりませんでした。(笑)
下記の記事にあるようなローモデルになったり励まされたり憧れたり共感するようなヒーローではないんですよね。
ただただ圧倒されてく。
けどどっちも好きなヒーローです。

 

scheherazade.hatenablog.com

 

 

 

~だから私は推しました第8回~未来へ背中を押してくれた愛の話

<あらすじ>
事件当日、本当は何があったのか?
その真相に迫らんとする刑事・聖護院。
そしてハナと愛の行く末はどうなっていくでしょうか?


<握った手>
誘拐されて瓜田を突き落としたのはハナではなく愛さん。
彼女はハナをライブに行かせて、そして自分が罪をかぶるために出頭していました。
問い詰めていく聖護院でしたが、愛さんはなかななかそれを認めません。
そこにあらわれたのは舞台衣装そのままで駆けつけてきたハナ。
ここからの二人のやりとりがめちゃくちゃいいんですよね。
ハナが握手しようとしてそれを拒絶する愛さん。それでも握った手。

 

この時愛さんの中でいろんなぐちゃぐちゃした感情が渦巻いてたんだと思います。
自分が身代わりになっても構わないと思えるアイドルが来てしまった事への動揺と怒り・悲しみ・やるせなさ。
握手を拒否したのは、ハナからの最後のお別れのように愛が無意識に感じたからなのかな?と思います。

 

前回で愛さんはいじめ問題に自分は口をはさまず、どうすればいいのかハナちゃんの決断にちゃんと委ねていました。
ちゃんとこの時は相手と自分の一定のラインを守っていたんですよね。けっして「共依存」にはならずに。
だけど今回、愛さんがハナちゃんの罪を被る事はそのラインを超えています。
時間稼ぎまではいい。アイドルの最後のライブはこの日にしか行えない。
それをトップオタとして守り抜く。
オタとして彼女がしていいのはここまで。
それ以上は瓜田と同じになってしまう。
愛さんと瓜田は紙一重。二人とも一人のアイドルへの感情がものすごく大きい。
「なんで気づかないんだ!!」と叫ぶ瓜田と「なんでここに来たの?」と思っただろう愛さん。
どちらも相手の意見や生き方を無視していると言えます。

 

確かに愛さんはラインを越えました。だけど、だけどですよ。
今回ハナちゃんがそのバランスを取り戻しにきました。
松田さんに会いに行くのが間違いかどうか愛に聞いていたまだ不安げなハナちゃんが。
自分の足で。自分の意思で。
ちゃんと自分のやったことは自分が背負っていくのだと表明するために。
庇おうとしてくれた愛のために。
バランスを崩しかけた愛さんの手を握ってくれたのは今度はハナでした。
(それと何度、振り払われても握ろうとしてくれる小豆君も)

 

<変化したもの>
ハナの監禁ニュースはネット、週刊誌、テレビにまで拡散されていきました。

「女ヲタによる過剰な投資」「考えが大変、幼稚だっていうこと」

それらにのる情報は一見すると事実のようだけど、そこに流れる文脈には理解がない。
真実とは限らない。
だけどそんな世間の「反いいね」をもらっても今の愛さんは気にしてない様子。
会社を実質、首になってもどこか吹っ切れた感じですね。
一話の彼女からは考えられないほどの変わりよう。
ハナちゃんは愛さんと出会って変わって生まれ変わったと言ってましたが
きっと愛さんもハナちゃんと出会って生まれ変われました。


<推すって…>
ハナちゃんの不起訴祝いをベースメントで行うサニサイのオタ達。
そこで最後のライブの日の上映会が行われました。
映像の中でハナは次のようなことをいっています。
「自分は寂しくてアイドルになったヤツだからもう皆さんと会う事はない。
もう満たされてしまったから。」
「皆さんが教えてくれた『推すって愛だ』。それを今度は誰かに感じさせるような生き方をしたい。」

私はハナちゃんがアイドルに未練がまったくないといえばそうではないと思います。

けどここでファンに残す言葉は心残りではなく未来へ向けた言葉。
そして満たされてしまったのは本当で、だからこそ今の自分は過去の自分がしてきた事に向き合う力ができた。
このステージでアイドルの栗本ハナは消えてしまう。
それでもファンの人が推してくれた事、自分がここで感じた事はは永遠に残り続けるし、
いつかその力は誰かの背中を推してくれる。

それはサニサイ最後の優しい陽だまりのような素敵なスピーチでした。

<一年後>
解散後はそれぞれの道へ。
花梨ちゃんは新しいグループのメンバーとして活躍中。
彼女のインスタには元サニサイメンバーの詩織ちゃんとと紀子ちゃんも!
凛怜ちゃんはどうやらレポーターに。夢を叶えてますね。
アイドルは夢への踏み台と周りに配慮がなかった時期もありましたが
それに気づけた事で結果的にはレポーターという夢に逆に近づけたような気がします。

 

愛さんはというと会社を首になったあとは椎葉さんの事務所で働いている様子。
それからベースメントでも相談役というかバイトしているのでしょうか?
アイドル達へのアドバイザーも兼ねている感じも。
椎葉さんの事務所で働いているだけあって、法律の知識をみにつけているみたいです。

 

そして……。
小豆くんから届いたLINEに映っていたのは、
松田さんと並んでほほ笑むハナちゃんと姿でした。

地下の小さな太陽だった彼女はそこから飛び出し、
自分の暗闇と自分が作り出した闇の中にいた少女を確かに照らしていました。

 

 

彼女達の未来が明るいものでありますように。

 

 

 

 

 

~だから私は推しました第7回~感情を分かち合いながらも、分かつという事

<あらすじ>
ハナの許容範囲を超える過去を知り、オタをやめた愛。
それ以来ハナはステージにも現れなくなり黒い噂は広がり炎上は広がってしまった。
日常に帰ったように見えた愛だが、そんな現状にたまらず小豆沢に連絡する。
そこから彼と椎葉と共に愛はは真相を確かめるべく動き出した。


<「ウケる」で始まるいじめについて>
前話の感想で「信じる・信じない」は置いといて、実際に「何が起こったのか」
を突き詰めて欲しいと言いましたが、その答え合わせが今話する事が出来ました。
事実を要点だけを書くと

ハナのクラスメイトの松田さんにインターナショナルの学校で彼氏が出来た。
松田さんのそんな様子に対してハナの友達グループの一人が気にくわない。
そしてハナは松田さんの彼氏を茶化したコラを作ってグループ内で共有した。
瞬く間にそのコラは学校中に拡散され、松田さんはリストカットするまで追い詰められてしまう。
そうなると次にハナがいじめのターゲットになった。

上記を見るとハナは加害者であり被害者でもあります。
愛に対して嘘もつきましたが本当の事も言ってました。
それにしても、このいじめの発生の仕方はとても腑に落ちる描写でした。
ハナ自身は松田さんをいじめてやろうとしてたわけではありません。
ただただ自分の身内グループの友達に「ウケる」と思ってやった軽い気持ちです。

 

このいじめのメカニズムは恐らく以下のようなものではないでしょうか?
誰かの気に障るAさんがいるとします。
そのAさんを馬鹿にするようななんとなく冗談が生まれてそれがウケました。
それによりAさんを嘲笑していい存在だという空気が作られ、その悪意なき悪意の空気が周りに波及していきます。
まるで水に落ちた一滴のインクのように。
(この「誰か」は政治力及び発言力がある者だとより強く周りを巻き込めていけます。)

 

この空気により追い詰めれた松田さん。
彼女がリストカットまでしたことが広がるとそれは
次のターゲットにハナを選びます。
「そこまで追い詰めた塚本さん(ハナ)ってひどくない?」と。
この空気自体には悪意という自覚がないというか
自分を悪意を認めることができない性質をもつがゆえにに、

個である誰かに「悪」をしょってもらおうとします。

 

そしてこのいじめのトリガーを引いたのは間違いなくハナ。
ハナに悪意はありませんでした。
きっとほんの些細な仲間内で「いいね」をもらえればそれで良かったのでしょう。
だけど…そうだとしても自分が投げたボールに傷つき、そしてそのボールがまた返ってきて彼女自身も傷つけました。
他者を踏み台にして手に入れた「いいね」が引き起こした行動の責任はどうあたってなくなる事はありません。

<そして愛さんは>
この事実を知って愛さんはハナちゃんに謝罪に行きました。

「私、ハナとおんなじとこいっぱいあるからわかるよ。」
「いいねって言われたら もっとそうしようと思っちゃうもんね。」

 

 

「ハナは責められて当たり前のこともあるともあると思う。」
「ハナのことを責めていい人ももちろんいると思う。」
「でも、それは…私じゃないよね。」
「私じゃない…のに…。」

 

前半部分ではハナへの共感。
そして後半部分は自分の分身のごとく共感しているハナに明確に一線を引いてるのがわかります。
ハナと松田さんとの関係でおこった出来事であり、そこに立ち入るべきではないと愛さんは自分を省みているんですよね。
彼女達の関係は果たして共依存なのか?と言われてきましたが
ここにきてバランスがとれるように。
限りない共感があると同時に「わたしとあなた」からちゃんと「わたし」と「あなた」という関係になりました。
松田さんに会いに行く事が間違っている事か聞くハナちゃんに愛さんは
「ごめん、わからない。」と生き方の主導権を相手にちゃんと任せています。

<本当に推して欲しいのは>
狂気をみせた瓜田。第二回の感想で

 

 

うーん。まだ瓜田の事はちゃんと理解したとは言い切れないんですけど 彼はどうも誰も推していないハナちゃんを推している自分に沼っているような気がします。 「この人には自分しかいないんだ。自分こそがこの人を支える唯一の人間なんだ」 というのはある種のしびれるような承認欲求を満たしてくれます。 しかも「自分だけが」というのがここではポイントで、そこには自分が選ばれたような、特別のような、そんな気持ちにさせられます。 相手を支えているつもりでも実は自分が本当はそれに支えられている。 これ自体はどこにでも誰にでもある感情で、第一話でも愛が取り調べ室で 「私自身が誰かに「推されたい」人間だったんです」 と言っています。 瓜田はハナから「いいね」が欲しいし「推されたい」。 その感情がコントロール不可になった時それは毒へと変化する。 そして例えそれが毒だとしても彼にとってその「いいね」はどうしても手放せない。

~だから私は推しました第2回~この人には自分がいなきゃだめだという甘美な毒となりえて - シェヘラザードの本棚

 

と書いてたんですけどここにきてもやっぱり瓜田自身がハナからの「いいね」が欲しかった人なんじゃないかなぁと。
西瓜というハンドルネームを使うとこみても。
自分がここにいることを気づいて欲しい、認めて欲しい、
だってこんなに自分は君を想っているというのに!という感情が彼の中で渦巻いている。

監禁部屋がほんとうかどうか愛さんの証言に信ぴょう性がまだないので
なんともいえないんですけど、あの卵のパックはそれだけの愛をハナに捧げている事の証明をしたいことのあらわれかなぁ、といまのとこ推測しています。
でも確かサニサイが広告塔になった卵パックって透明のプラスチックなんですよね。
あれは紙なのでうーん、あれは視聴者を騙すためのミスリードのシーンなのか
それとも瓜田の間違った愛し方という演出なのか迷うところです。


<君にさよならを>
twitterではちょっと書いてたんですけど小豆沢はやはり愛に気があるようです。
そこを花梨に見抜かれてました。
花梨と小豆沢のシーンはどうも私のつぼにはまってしまったというか。
面白かったですね。
花梨にとって小豆沢みたいなあしながおじさんというかメンター?プロデューサーみたいな存在。
そんな彼に対して彼女から「さよなら」をしているんですよね。
別に小豆沢は花梨に対して支配的であったりしたわけではありません。
自分の思い通りしようとする者からの解放という話というわけではないけれど
なんというか自立?のシーンのようにも見えるというか。
うーんなんだろうな。
そうそう、そして気になるのが、
これまで彼らの階段シーンは花梨が上にいて小豆沢が下にいました。
それが今話で同じ位置に座っているんですよね。
花梨を支える小豆沢という構図から明らかに変化したシーン。
この対等な位置が何を意味するのでしょうか?
彼らの関係は愛とハナとの関係性の別バーションでもあるようなそうではないような。
答えなき関係性はそのまま答えなのないまま終わりそうでもあります。

 

 

 

 

~だから私は推しました第6回~それでもあなたは推しますか?

<あらすじ>
サニサイはwebCMにも出れるように。着実に成功の階段を踏み出す彼女達。
そのCMで出ている卵を買い占め、広告宣伝効果に貢献する愛。
ますますサニサイにはまり込む愛の耳にハナの悪い噂が届くようになる。
疑心暗鬼にかられる彼女が下す決断とは?


<壊れる幻想>
チャットレディをしていることが真衣にばれたことで話し合いの場を持つことになった愛。
そこで「相手は金づるとしか思ってない。」と真衣に言われてしまします。
そこから愛は一気に疑いの目でハナを見てしまうようになっていきます。
瓜田との事、いじめ問題の事、病室の事など。

今回は愛の心の変遷は見ていてギュッと心が締め付けられようでした。
「裏切られた」とか「嘘をつかれた」といった感情もあるかもしれないんですけど、
自分の抱いていた相手への幻想が崩れてしまったってのが大きいかなと。
愛にとってハナは器用で頑張ってるんだけど空回りして結果になかなか結び付かない、
そんな自分が感情移入できる女の子でした。
もう一人の自分であり半身のような。
だけどそれが反転して相手の事を金づるとしか思わず嘘つきでしかも昔いじめを
していた、という幻想に再構築されました。

このギャップについていけないというか普通にしんどい。
夢中になることを「沼にはまる」といったりしますが
その暖かった沼の温度がさーっとさがり、体と心も冷めていく感覚。
だから怒るっていうよりただただ悲しいんですよ。
自分が勝手に期待して勝手に絶望してたんだと分かるから、相手への怒りよりもそんな自分に絶望して。
だから愛が「嘘つき!裏切ったな!」というよりもハナちゃんを責めるよりも
伸ばされた手を握れない。
このシーンはほんと切ないんですよね。


<壊れたが故に生まれるチャンス>
これはアイドルとファンのお話ですがこういうこと自体は日常でもよくある事なのではないでしょうか?
家族、友人、恋人、この人はこういう人なんだと認識して愛していても、
何かを境に相手の輪郭が急にぼやけてつかめなくなり時として幻滅すら覚える事に。
だけど相手を完全に理解するという事自体、それこそ幻想。
人間なんだから相手も自分も日々気持ちは変わっていくし、知らない面だってあるしこれからもきっとそういう面も増えていくもの。

とはいえ愛とハナちゃんはアイドルとファンという日常とはまた違う関係性の二人。
しかも地下アイドルという極めて距離感の近い関係性で、その言葉だけではくくれない二人の歴史と物語がありました。
愛はハナちゃんを信じられなくなりオタをやめましたが心残りはやはりある。
だからできたら「信じる・信じない」ということは置いといて、実際には「なにがあったのか」を突き止めて欲しいなと思います。

 

うーん。そう考えると相手への幻想が壊れるってチャンスじゃないですか?
その人の自身の本質にせまるという意味においては。
それが分かった時に自分がどうしたいか?というのをあらためて考えればいいわけで。
まぁ、そこまでの思い入れなぞないからその前に関係を切り捨てるってのもありなんですけどね。

 

いやはやなんだかこのドラマはA面ではアイドルとファンの関係性のお話で
B面でミステリーがありそれが絡み合ってどちらとも絡み合っていくさまが面白いです。

<彼女の動機>
前に真衣さんの怒りの根源はなんなんだろう?と書いててんですけど
今回はっきりしました。
愛に家族を壊した母親の姿を見てたんですね。
だから熱狂的になにかにはまってしまう彼女にいら立ちを感じていたと。
ハナの本質が分からなくなったと同時に真衣さんの動機の輪郭がはっきりしました。
その対比が鮮やかであると同時に、文脈がみえると世界やその人の見え方がまるで変わるもんですね。

 

 

~だから私は推しました第5回~そして延命するアイドル

<あらすじ>
アニサマも成功に終わり、無事に人気・知名度ともに上昇したサニサイ。
衣装もグレードアップして新規の仕事も増え順風満帆にみえます。
が、メンバー内部では色々と問題が起こったようで……。


<ファンという名の運営>
アイドル達の躍進と共に感じるのは寂しい気持ち。
近くにいて欲しい、だけど手の届かないほど遠くへいってほしい。
こういう二律背反を抱えながら応援するファンは多いのではないでしょうか。
椎葉さんも親元から娘が離れていくよう気持ちでしんみりしていました。
距離感が近い地下アイドルならなおさらです。

メンバー間のごたごたがおこった時に、アドバイスをしたのはとりわけ距離の近い愛と小豆沢でした。
本来ならハナちゃんのいうように運営が問題ごとに介入して解決するべきでした。
だけどほんとこの運営はそういう教育者やマネージャーとして欠落しているので
アイドル自身がファンにアドバイスを求めてきました。
繋がり自体どうなんだ?という問題はいったん脇に置くとしても、
これはですね、ほんとうはダメなんですよ。短期的にみたら解決したけれども結局のところ
運営自身の反省につながっていないので。
同じような事が繰り返された時に、なぁんとなくあの時解決したしな!というのりを組織が一回覚えてると
何も解決策を模索したり提示する努力を確実に怠るからです。

 

だから愛と小豆沢のアドバイスが親身かつ誠実であればあるほど運営のダメさ加減が浮き上がってきてしまうという。
いやー、ほんと小豆沢の花梨ちゃんへの真摯なアドバイスの美しさと比べてほんと……。

<アイドルのモチベーション>
組織であればいろんな人達がいるようにアイドル達の目標やモチベもいろいろ。
だから喧嘩だって起こります。
今回は凛怜と花梨が衝突しました。
この二人は実は共通点があってアイドルにすべてをかけているわけではなくて
第二の目標があります。
凛怜は女子アナ、花梨はソロ歌手。
けど花梨は歌って踊る事が夢へと直結していますが凛怜の場合は少しずれるんですよね。
もちろん人前に出て何かをするということでは共通してはいますが。
そこまでアイドルとしての能力向上に熱心でない。

花梨の場合今のここにある現場に全力でパフォ―マンスするという目的があり、
だからそこを軽んじている凛怜にいらつていしょうがない。
完璧にやってくれるなら文句もないけれども、自分の居場所を奪ってそれか?
という気持ちはあったのでしょう。

とはいえ舞台で喧嘩した二人は共にアイドルとしては失格だったでしょう。
夢やキラキラを見せるという点においてあれはただただファンを不安にさせる行動でした。


<凛怜はどんなアイドル?>
凜怜はアイサマを経て人気が上昇しました。
なんでなんだろう?と思ったのでちょっと考察してみたいと思います。
どうも凛怜の新規のファンは女性が多いみたいなんですよね。
グッズ展開を見ても。
これは多分、新曲がかっこいい系でクールビューティーの凛怜にうまくハマったんでしょうね。
そんな彼女の魅力に惹かれた女性ファンがついた可能性があります。
センターでメインボーカルの花梨も上手に表現していると個人的には思うんですけど
歌の「体現者」かつ「主人公」としては凛怜のほうがぴったりと感じた人が多かったのかもしれません。
彼女は自分をモチベもないしアイドル向きではないと思っていたかもしれませんが
だからこそクールな彼女がアイドル界を変えていくのでは?
と柿崎こと、かっきーは思っていたのかもしれません。

彼の論文のタイトルは

「アイドル界における凜怜の存在」~サニーサイドアップにおける意識高い系女子を中心に

とあり、凛怜がアイドル界を変えていく可能性を見出しています。

<こんな時だからこそ>
サニサイが少しステージが変わったことでメンバー達も揺らぎました。
上昇すれば安定を感じるかといえばそうではなく、むしろ足元が不安になる事もあります。
このままでいいのか?これ以上に上がって行けるのか?未来に不安を覚え前に進む事に怯える時もあります。
私達とは?サニサイとは?そこにはまだ確固たる自信は彼女達にありません。
こんな時だからこそファンの「推し」がアイドルには必要なのかもしれません。
ちゃんと見ているんだと、あなたは気付いてないかもしれないけれどあなたにはこんなにいい所あるんだと。
ファンにとってもサニサイが小さな太陽であるように、アイドルにとってもファンが小さな太陽であるようで
あればいいと思います。