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物語同士のつながりが好き

~だから私は推しました第2回~この人には自分がいなきゃだめだという甘美な毒となりえて

<あらすじ>
前回の握手会より愛は少しずつ応援の仕方(コール&レスポンス)を覚え始め、
サニサイのオタク仲間達とも交流を深めていきます。
そんな日々の中、愛は偶然にもハナには瓜田というストーカー気質のオタクがついてる事を知る事に。
果たして愛はそれにどう立ち向かっていくのでしょうか?

 

 


<まだ沼ってない(沼に沈みながら)>
ハナ推しになった愛ですがドルオタピカピカ一年生。
なにをどうすればいいのかよくわからない様子。
それを見かねた年長の椎葉と小豆沢がアドバイスをくれます。
新しい世界に踏み込んだ時ほんと椎葉さんみたいな人がいてくれると助かりますね。
そして前回、愛はスマホを落としてしまっていましたが小豆沢が拾い主だと判明します。
ここでの二人のやりとりが面白い。

小豆沢「オタクのですよね。」

愛  「オタクの方って本当に「オタク」っていうんだなぁって。」

 

 

この言い方だと、さも自分はオタクじゃないし自分はあなたたちとは違う人間なんだなと線を引いたように感じます。
なので小豆沢も
「おばはんって本当おばはんなんだなって」と言い返しました。

 

これは愛と同じ手法、つまり相手をカテゴライズ(偏見)してバカにして
かつ、それが事実だから言って何が悪いの?という反撃です。
愛の言い方は確か悪手です。

ここでわかるのは、まだまだ彼女の推しへの気持ちは不確かで曖昧であり、
まだ自分の「好き」に手ごたえを彼女が感じてないという事です。
でなきゃこういう「自分はそっち側の人間じゃないからね。」というような言い方はしません。
彼女が胸をはって確かな実感をもって「あなたが推しです!」と言うにはもう少し時間をかかりそうです。
これはアイドルとファンだけでなく、なにかしら他の関係性においても
お互いの間で絆という種を蒔き水をやり育んでいくのと同じ事なんでしょう。

 

 

<君の「いいね」を独り占め>
さて今回、強烈な印象を残したのは瓜田でした。
彼はライブ中に「ハナちゃん」と叫んだ愛を見つけて睨みつけていました。
その後のチェキ会でもハナに対して愛の事を

「一枚だけしかチェキ券買わずにべらべら喋る女。そういうのって所詮うすぺらってわからないわけ!」
と罵ります。

 

このセリフから

 

「お金をかけてハナの収入を支えている自分の方がハナにとって重要だろ?
 お金をかけてお前を支えている自分の愛は重いだろ?
 それがわからないハナは馬鹿なのかな?」

 

と言ってるように感じました。

その後、ハナを出待ちして

「瓜田さん。今日もごはんをありがとうございます。
明日も私のためにお仕事頑張って下さい。」

 

と言わせています。
他にも彼はチェキ券が共通になった事で他のファンが彼女に耐えきれないのか
自分が洗濯機をあげたんだだと大声で叫びました。

 

 

うーん。まだ瓜田の事はちゃんと理解したとは言い切れないんですけど
彼はどうも誰も推していないハナちゃんを推している自分に沼っているような気がします。
「この人には自分しかいないんだ。自分こそがこの人を支える唯一の人間なんだ」
というのはある種のしびれるような承認欲求を満たしてくれます。
しかも「自分だけが」というのがここではポイントで、そこには自分が選ばれたような、特別のような、そんな気持ちにさせられます。

相手を支えているつもりでも実は自分が本当はそれに支えられている。
これ自体はどこにでも誰にでもある感情で、第一話でも愛が取り調べ室で
「私自身が誰かに「推されたい」人間だったんです」
と言っています。
瓜田はハナから「いいね」が欲しいし「推されたい」。
その感情がコントロール不可になった時それは毒へと変化する。
そして例えそれが毒だとしても彼にとってその「いいね」はどうしても手放せない。


それが壊されたのが今回、愛の提案した共通のチェキ券でした。

瓜田の自分だけのアイドル・ハナからみんなのアイドル・ハナへと認識を変える事で。
果たしてそんな彼が今後どうなっていくのでしょうか?

 

<余談>

言われているとは思うんですけどサニサイのオタクたちの名前には全部植物の名前が入っているのはなんでなんですかね。

サニサイという太陽の名前の元で育つ植物という所でしょか???