シェヘラザードの本棚

物語同士のつながりが好き

~だから私は推しました第6回~それでもあなたは推しますか?

<あらすじ>
サニサイはwebCMにも出れるように。着実に成功の階段を踏み出す彼女達。
そのCMで出ている卵を買い占め、広告宣伝効果に貢献する愛。
ますますサニサイにはまり込む愛の耳にハナの悪い噂が届くようになる。
疑心暗鬼にかられる彼女が下す決断とは?


<壊れる幻想>
チャットレディをしていることが真衣にばれたことで話し合いの場を持つことになった愛。
そこで「相手は金づるとしか思ってない。」と真衣に言われてしまします。
そこから愛は一気に疑いの目でハナを見てしまうようになっていきます。
瓜田との事、いじめ問題の事、病室の事など。

今回は愛の心の変遷は見ていてギュッと心が締め付けられようでした。
「裏切られた」とか「嘘をつかれた」といった感情もあるかもしれないんですけど、
自分の抱いていた相手への幻想が崩れてしまったってのが大きいかなと。
愛にとってハナは器用で頑張ってるんだけど空回りして結果になかなか結び付かない、
そんな自分が感情移入できる女の子でした。
もう一人の自分であり半身のような。
だけどそれが反転して相手の事を金づるとしか思わず嘘つきでしかも昔いじめを
していた、という幻想に再構築されました。

このギャップについていけないというか普通にしんどい。
夢中になることを「沼にはまる」といったりしますが
その暖かった沼の温度がさーっとさがり、体と心も冷めていく感覚。
だから怒るっていうよりただただ悲しいんですよ。
自分が勝手に期待して勝手に絶望してたんだと分かるから、相手への怒りよりもそんな自分に絶望して。
だから愛が「嘘つき!裏切ったな!」というよりもハナちゃんを責めるよりも
伸ばされた手を握れない。
このシーンはほんと切ないんですよね。


<壊れたが故に生まれるチャンス>
これはアイドルとファンのお話ですがこういうこと自体は日常でもよくある事なのではないでしょうか?
家族、友人、恋人、この人はこういう人なんだと認識して愛していても、
何かを境に相手の輪郭が急にぼやけてつかめなくなり時として幻滅すら覚える事に。
だけど相手を完全に理解するという事自体、それこそ幻想。
人間なんだから相手も自分も日々気持ちは変わっていくし、知らない面だってあるしこれからもきっとそういう面も増えていくもの。

とはいえ愛とハナちゃんはアイドルとファンという日常とはまた違う関係性の二人。
しかも地下アイドルという極めて距離感の近い関係性で、その言葉だけではくくれない二人の歴史と物語がありました。
愛はハナちゃんを信じられなくなりオタをやめましたが心残りはやはりある。
だからできたら「信じる・信じない」ということは置いといて、実際には「なにがあったのか」を突き止めて欲しいなと思います。

 

うーん。そう考えると相手への幻想が壊れるってチャンスじゃないですか?
その人の自身の本質にせまるという意味においては。
それが分かった時に自分がどうしたいか?というのをあらためて考えればいいわけで。
まぁ、そこまでの思い入れなぞないからその前に関係を切り捨てるってのもありなんですけどね。

 

いやはやなんだかこのドラマはA面ではアイドルとファンの関係性のお話で
B面でミステリーがありそれが絡み合ってどちらとも絡み合っていくさまが面白いです。

<彼女の動機>
前に真衣さんの怒りの根源はなんなんだろう?と書いててんですけど
今回はっきりしました。
愛に家族を壊した母親の姿を見てたんですね。
だから熱狂的になにかにはまってしまう彼女にいら立ちを感じていたと。
ハナの本質が分からなくなったと同時に真衣さんの動機の輪郭がはっきりしました。
その対比が鮮やかであると同時に、文脈がみえると世界やその人の見え方がまるで変わるもんですね。