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見えない忠義を求める氏真と見えない絆で立ち向かう直虎~おんな城主直虎25話~

おんな城主 直虎 完全版 第壱集 [Blu-ray]

井伊の材木の売り先が決まり喜びに沸く直虎達の一方で、「塩留」という経済封鎖を使い武田を追い込もうとする氏真。
他国との情勢がだいぶ不安定になりつつあるようです。
今回はそんな暗雲立ち込める今川家に、思わぬ形で巻き込まれる井伊家が、どのようにその危機を脱していくのかが描かれていました。


<国防と経済>
前回、方久さんが「塩留」に対して商魂魂を燃やしてました。まさに「上に政策あれば、下に対策あり」ですが、「上」である今川家はたまったもんじゃないでしょう。
取り締まりのおかげで効果がではじめたようですが、商売人達は自由に商いができないとみるや、さっさと気賀に店そのものを、移していっているようです。
商売人のこの「対策」に対して、今川も「政策」として自治で治める気賀に城を置き、影響力を強めようとします。まさにいたちごっこなんですよね。
この話自体は次回に持ち越ししそうですが、個人的にすごく気になりました。
自国を他国の侵略から守ろうとするとした時に「民を潤す」という目的の経済がどうしても統制されてしまう。
もちろんそのすきまで儲けをだす「武器商人」もいるのはいるのですが、全体的に見ると経済的にマイナスではないでしょうか?そこらへんはくわしくないので想像ですが。
だけど、どちらも確かに国のためでもあって、その矛盾を抱えて国を運営しなけれならない為政者のおかれた立場は、非常に難しい。
まぁ、そんな国の事情なんか知るか!といわんばかりに敵国にも武器を売っていたオランダ商人もいるんでなんともいえないんですが。
そういえば、家康が朱印船貿易で取引していた相手もオランダ人の「ヤン・ヨーステン」でした。
方久さんからはそんなオランダ商人スピリッツを少し感じます。


アウトローからの脱却>
武家になるのを断った龍雲丸一味でしたが、なんと気賀で万事屋(便利屋)のようなことを始めたようです。それも流れ者達に寝床や職を提供しながら。
誰かから奪う事を生業にしていた彼らが、誰かに「生きるすべ」を与えていく存在になっている。
差別的扱いを受け世の中をどこか疎んでいたのに、今やさらに不安定な立場の人間に手をさしのべようとしている。
龍雲丸は直虎のいうように「奪い合ってしか生きれぬ世」に一矢報おうとしているのではないかと思います。「奪い合わずともよい世の中」のために、その小さな一歩として。
それは確かにベイビーステップだけど世の中の一部であることは事実です。
立場をこえて直虎と龍雲丸達はその「夢」を共有できるのではないでしょうか。


<忠義というかたちないもの>
直虎は、売った木材が三河の徳川に流れた事で今川から謀反の疑いをかけられ、またも申し開きに行かなければなりませんでした。
軍事物資にもなりえる木材を大量に売り渡す時点で、警戒心がないのは「うかつさ」があるといえるかもしれません。
ですが、今回は氏真にはそれ自体よりも目的が別にあります。「井伊の首を直虎から政次にすげかえる」ことです。
彼のこのたくらみに対して直虎がどのように対処したのかを追っていきたいと思います。

今回は15回の「おんな城主 対 おんな大名」のリフレインともいえる話です。
寿桂尼との対決では、直虎は男装姿で現れ、意表をついてから理屈で殴るという戦法でした。
しかしそれだけでは足らず、農民達の「嘆願書」が運よく届けられ、それが彼女を救いました。(もちろんそのあとの彼女のスピーチが後押ししていますが)

 

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 彼女はそんな運の良さを自覚しています。自分一人だけの力だけではどうしようもない事も。その「運」を自覚的に利用するために今回は数々の手を打ちました。

 

まず目標として「材木を駿府へ送り届ける事」があります。
この目標達成のために二重、三重の指示を方久・六左衛門に命じました。
①成川屋から材木を取り戻す。出来ないなら→
②気賀で材木を買って「井」の印を押す。それもだめなら→
③龍雲党に頼んで三河行きの船から材木を奪還する。

 

そして自身が時間稼ぎのために体をはって薬を使い、熱を出すという荒業にでました。

 

 

ここまでが下ごしらえの段階で、氏真との直接対決が待っています。
寿佳尼との対談の時は「法」の話でもあったせいか最初に「理」で相手に挑みましたが、今回はまず「情」で訴えかけました。
直虎は売った木材の売り先までは預かり知らぬところで、謀反などない。井伊は忠義をつくしている、と必死に言います。
それに対して氏真は、信じてやりたいとこだけど、いちはやく松平に通じた井伊だしなぁ、と返答しています。

 

 

えっとここで、氏真の心境を推測しますが、彼ってすごく今、疑心暗鬼になっている状態なんですよね。実際、裏切りまくりで誰を信じていいかわからない。国の周りも情勢不安定で。
そんな彼は、死んだ偉大な父親とやり手の祖母がいる中でなんとかやっていかないといけない。だけどまだまだ自信がない。
だからこそ直虎よりも信頼関係があると思っている政次に挿げ替えたい。少しでも不安を取り除くために。
なんかこの辺は、妻(直虎)の浮気を疑っているので、自分に好意をもってくれてる新しい彼女(政次)に乗り換えたい!という旦那さんかな?と感じました。
たとえがうまくないんですけど。
そして直虎から「こういうやり方は真に忠義ある者を失う。」と指摘されてしまいます。
彼が少し動揺したのは、もっとも恐れている事(信頼できる人がいない)を指摘されたセリフだからでは?と想像します。

 

で、こういう状態の相手には基本的に何をいっても通じない、というかそうじゃなくても「忠義」というみえない感情を信じろ!っていわれても信じる事ができません。私もきっと疑います。
だってその「忠義」には理由がない。むしろ遺恨が残る分、裏切ると思った方が理屈は通る。

理屈だと勝てないので「こいつは本気で、その『忠義』を証明しようと動いてる。なにやら骨を折って。理屈的にはおかしいけど。」と思わせる事が重要です。
それの目に見える形として「今川に材木を届けさせる」という事が必要ではなかったかと。

 

といっても、来週まで持ち越しなんでなんともいえないのですが、直虎はやれるだけの事はやったと思います。
いやほんとに「みえないもの(忠義)」の証明って難しいんですよね。個人的に直虎が今川家に忠義心があるかといえば、ないわけで。けど生き残るためには、こころなき「忠義」を相手に納得させなきゃならない戦術をとらないといけない。前回の庵原さんとこの会話からみえるように。
ほぼゼロベースから証明しようとすると、熱意を形にして見せるしかなくて。
こういう、かたくなな相手の心を動かすにはどうすればいいのか?というのは、ちょうど借りた映画でも似たような場面があったので書きたいと思います。たぶん。

 

 

<政次コーナー>
さてさて、長くなりすぎたのでどうしようかと思いましたが少しだけ政次さんについて。
いや、でもほんということがないんですよね。もう信頼関係が深まりすぎて、完全に囲碁という小宇宙で二人の世界でしたし。
黒と白の世界でふたりは溶け合って灰色の存在に。この白黒つかない世界で、とかわけのわからないポエムじみた言葉しかもう出てこないんですよ。
言葉を交わさずとも深く信じられる絆がある。意外にも氏真はそういうポジションの人はいなくて、対照的だったなぁと。
彼には支えてくれる妻や家臣がいても、戦友や同じヴィジョンをみれる同志がいるようにはみえなかったので。
いたら、ごめん。氏真くん。
信頼を預け合い、なにかあれば託す事ができる存在がいる。二人とも明確に言葉にしないのにそれを感じられる。見えないのにそこに確かにあるんだと信じられる。
これを僥倖といわずして何を僥倖と言うんだろう。
この二人がたどり着く先に、どこまでもついていこうと思いました。