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政次さんの対直虎成績0勝1敗 果たして勝利の女神は今回どちらに微笑むのか?外交編~おんな城主直虎15話~

おんな城主 直虎 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)

前回は、井伊の内政問題を扱っていました。今回は外交になります。
昔から上下関係の同盟関係をもつ国の関係は非常にバランス感覚をとるのが大変です。
独立した一国としてのアイデンティティを守る事と安全保障のためには従順でなければならないという現実のはざまで、なんとかやりくりしなければならないからです。
中国の冊封体制のもとにいた韓国や琉球王国の外交官達の努力は涙なくては語れません。

 

テンペスト 第一巻 春雷 (角川文庫)

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 さて、我らが政次さんですがまだまだ後見人争いから降りる気はないようです。

「徳政令で農民達の心はつかめたかもしれないし代案も示せたが、それはあくまで井伊内部のことであって外の世界じゃ通用しないよ。」

といったところでしょうか。たしかに外の世界での外交キャリアは政次のほうに分があります。
嫌われている井伊家よりも動きやすさがある分こちらが有利といえるでしょう。

 

まずは政次がどんな策でもって直虎を攻略しようとしたかを見ていきます。

 


今川家からの呼び出しは直満・直親の例があるようにほぼ「死」を意味しています。
そこで政次は「後見からおりれば命だけは助かる。セカンドベストじゃないか。」
と評定の場と今川家への道中で二度も直虎へ提案します。
が、基本的に直虎がのむわけないのをみこしてのことなので、「とりあえず言ってみた。」って感じが強いです。
そこで虎松の生母であるしのに「直虎の後見を認めない」と一筆書いてもらいました。
これが政次の切り札となります。
たとえ、直虎が今川家に運よくたどり着いたとしてもこの一筆さえあれば、ひっくり返すことができる魔法のカードです。
しかもバックには今川家がついてるという。鬼に金棒状態とはまさにこの事。

 

さて直虎はこの小野・今川連合に対してどう対抗していくのか?
まずは、今回の直虎のミッションを整理します。

    • ①「今川家に無事にたどりつけ!!」
    • ②「徳政を行わなかったことを通させろ!」
    • ③「直虎が後見だと今川家に認めさせろ!」

     

     

という3点です。

 

は直之との衣装チェンジで政次を出し抜きました。(直虎があきらめる女子ではないと知っていながら、蛇でおびえる彼女をみてしまったものだから政次はぬかってしまった。)

 

 

法治国家である今川家に対してその法である「仮名目録」を使って対抗しました。ルールで誰かをしばるなら自分もまた縛られるので、今川サイドも筋が通らない無茶ぶりは出来ない。
ですが、ここで寿佳尼も負けてはいません。
すかさず「その法律古いよ。バージョンアップしてるからそっちに従おうね。だからさっさと徳政を行わんかい!!」と命じます。

 

 

ここでに繋がるのですが直虎はとっさに「徳政を行うということは、つまり私が後見でいいって事ですよね?」と返します。
なにこの理屈の殴り合い?法廷もののドラマをみているようでめっちゃ楽しいですね。

 

さてさて、ここで割り込んでくるのは政次くん。

上記にある魔法のカード「しのの一筆」を取り出します。
二人のやり取りを無効化できる最強のカードです。

なぜならどんなに直虎が机上で政治的手腕を発揮してもその正当性に支持がないとすれば、実行力があるかは疑わしいといっているようなものだからです。
すなわち後見とは認められません。
政次はそれを見据えて、ここぞというときにこのカードを切りました。

さすが小野外交官、やりますねぇ。

 

直虎もここまでか・・・と思われた時、巻物が届けられました。
瀬戸・祝田の百姓達の直虎後見の嘆願書です。

このシーンめっちゃくちゃいいんですよね。なにがいいって、直虎一人の能力だけではやっぱり今回は政次の策に抵抗できなかったんです。
それぐらいこのカードは強い。

 

 

Twitterでも書きましたが、「城主」直虎という「花」を咲かせるためには、「根」である民と「茎や葉」である家臣の支えが必要なんですよね。
彼女は今回そのことが身に沁みた事でしょう。

第三回「おとわ危機一髪」の回で蹴鞠勝負をしかけ成功しましたが、あれはあくまで大人の手のひらのうえで、おこったものでした。

自己完結した自己満足でとどいた小さくせまい世界のものです。そこに他者は存在しません。(それ自体は悪ではないし時にその思い込みで前に進める。)
だけど、直之をはじめ傑山達がどれだけ自分をささえているか、民の力はひとりひとりは小さくても確実に自分の力になっているか、それがわかったと思います。
直虎が戦っていく上で、自分の能力以外の他者の「見えへん力」がめぐりめぐって自分の力となっていくというのは、少女時代ではけっしてたどり着けなかった新たな大きくて広い世界です。

一人じゃ飛べない空もみんなとは飛べるってやつですね。

 

ここで対照的なのはやはり政次で、彼は一人で世界を背負ってしまっている人なのでどうしても自分の理論上の策にすがるしかない。
基本的に誰にも頼ることができず一人で生きていくしかなかった彼の限界が見えてしまいます。間違いでは決してないんですけど。
だけど彼のそうせざるをえなかったという生い立ちを考えると、それでも「井伊のために」という高潔さからくる行動はなかなかできるものではありません。


長くなりすぎて自分で書いててひいてますが、直虎と寿佳尼の対話にもどります。
ここのポイントは「なぜ寿佳尼は直虎を後見として認めたか?」です。

 

直虎自身で今川にたどりつく胆力を見せ、対等に渡りあったというのももちろんありますが宗主国のトップである寿佳尼の判断は以下の二点。

  • ①民意が直虎側にあること。
  • ②「民を潤す」という目的のために合理的判断ができる能力が直虎にはあると確信したため。

 

まず、について。
百姓達ってどうしてもいやだと思うと「逃散」してしまう力の持ち主達なんですよね。
だから、ここで無理に今川領にしてしまっても逃げ出してしまって意味がないんです。吸収合併したはいいものの、社員がストをおこしては元も子もありません。

 

について。
井伊はこれまでは「今川憎し」といいう動機で動いているところがありました。聡明な寿佳尼がそれに気付いてないとは思えません。
この従属国の宗主国に対するルサンチマンは根深いものです。
決して馬鹿にされるべきものではないと私は考えています。

 

だけど現時点での今川家に逆らうのは上策ではありません。
ただ、民意を背負った直虎は「民を潤す」という目的のための動き、それがひいては井伊や今川の「利」となるといっています。
これは民意に支持基盤がある直虎がいうからこその説得力があり、

支持者の声を一政治家である直虎は無視する事はできません。
これがもし「家」のためという個人的感傷だけなら信頼ができないんですよ。
家族を失うという悲しみや相手への憎しみを知っているからこそ(寿佳尼は息子・義元を戦場で亡くしていますよね)
簡単には直虎のいう事は信用できません。だっていままでどれだけ井伊の人が今川家によって葬られてきましたか?そこに寿佳尼は悪意はなくても自覚的でしょう。

今回の政治ゲームでは直虎は「情」という駒を動かさず合理的な「利」で盤上を制しました。
だからこそ「民のため」という目的が直虎にあるがゆえに、井伊を治めるぶんだけなら問題はない。(つまりそれを最優先に掲げるかぎり今川を裏切らない)
と政治的判断を寿佳尼は下した。
と私は考えています。(政治も歴史も明るくないのであくまで個人的推測ですが)

 

いやぁ、それにしても愛する人達を今川家によって大勢失ったというのに、直虎は意外とその辺あっさりとビジネスライクな対応ができますよね。
むしろ政次に対しては身内だとおもっているからこその愛憎があって感情の生生しさが出てしまいます。
お互いそこんとこ無自覚なのかなぁ?もし直虎が政次の事なんとも思ってなかったらあんなにも敵意をむき出しにはしませんよ。
期待してるから、好きだから相手が見えないというのは案外お互い様な二人です。

 

 

さてさて、今回の外交対決も直虎が勝ちました。まぁ政次は直虎に負けたのではない。「見えへん力」に負けたのだ。
ともいえますが、どうみても男装姿の直虎の雄姿に惚れなおした感があるので、二敗どころか三敗してるように見える政次でした。

(最終的にここが一番言いたかった。)