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かつてアイドルだった君(運営)が創り出す夢~少年ハリウッド~

少年ハリウッド-HOLLY STAGE FOR 50- vol.6(Blu-ray)

*注意アニメ及び小説の少年ハリウッドのネタバレについて触れています。

少年ハリウッド完全版の上映記念!おめでとうございます!
ここに出てくるアイドル達の物語や魅力は様々な方が触れていると思われるので
今回は、元・アイドルで現・芸能事務所の社長である桜木広司さんについてあーだこーだいっていこうと思います。

 

 

<アイドルPに求められるものとは?>
アイドルをプロデュースするにあたって必要であって欲しい三つの人格があります。
一つ目はビジネスマン、二つ目は芸術家、そして教育者の人格。
もちろん大きな組織であれば一人の人間すべてが背負うものではなく分担されるものです。
ですが少ハリを擁するノエルジャパンエージェンシーはまだまだ小さな会社。

桜木広司社長の裁量権は大きく彼の考えが、ダイレクトにアイドル及び彼らの活動に影響を与えているでしょう。
そこで、桜木広司を上記に最初にあげたあげたプロデューサーに必要な人格をあくまで個人的にみてみると下記のようになります。

 

<ビジネスマン>
営業をかけたり企画(街中握手会)を立てたりと、
初期段階は少しずつはファンを増やしてたけど頭打ちになり停滞化。
実質的にかつての仲間であり現在は芸能プロダクションの経営者である早水海馬の支援がはいるので得意ではない。

<芸術家>
芸術の分野に答えなんてないけれど、自分の中では100点満点。

<教育者>
マネージャーであるテッシーと分担しているとこはありますが、アイドルを叱るべきところは叱り
そして一人一人をちゃんとみてるうえに、観察力が抜群。
彼らの本質を見抜き彼らにこれから何が必要であるのか?というのがわかっています。

 

 

<アイドルとプロデューサーの関係性>
で、この上記三つのバランスを保ちつつ大きくなるのが一番だけれどなかなかうまくはいかない。
彼の場合<ビジネスマン>の点が他二点より劣っています。
それはおそらく彼がロマンチストな人間である事も一つの起因してると思われます。

16話の握手回をお話にあらわれており、
「必然的にすることができる握手会での握手よりも、道端でばったりできる握手の方がよくないか?」
という考えで握手会をすることを渋っていました。

握手会の是非はここで置いとくとしても、やったほうが売り上げに結び付くのは事実。
だけどそのロマンチスト性は彼の芸術を結びついており、そこが愛すべき所でもあるんですよね。
そして彼の芸術家としての在り方の尊い所は、アイドル達が自分の芸術の駒になることをよしとしないところにあります。
(ここが言いたかった。前提が長い笑)

 

 

アイドルの「produce」は一歩間違えればというか自分の理想を創造するための道具になりかねない危うさと隣り合わせです。
これを回避するには、アイドルとプロデューサーが対等に夢を追いかけていける同志、または同じ夢の共犯者になる必要があります。
かといって最初から何もわからない、覚悟もない子供達にそれを求める事はできないので、彼は忍耐強くアイドル達を導いてきました。
それが結実するのが24話。
少年ハリウッドには「シャチョウのいう事がぜったい。」というものがありますが、
これはもう、いつかそれを超えて欲しいので彼は言っているんですよ。
劇場立てこもり事件は自分達がアイドルを「やらされている」ものではなく「なっていくもの」だと決断するお話になっており、彼らは自分達の意思でアイドルとしての行動がとれるようになっていました。

 

 

<本当に大切な者を守るために>
ではなぜ桜木広司がそのようなアイドル達に育て上げたいのかと言えば、彼がアイドルをやめる決断をした時の事が大きいと推測します。
当時社長であった人物が事故死する事で、少年ハリウッドは解散しなければならなかった。
それを決めたのは彼らの意思であるとはいえ、出来る事なら続けたかったと思います。。
なぜそれができなかったといえば「少年ハリウッド」が彼ら自身の夢ではなく「社長」の夢の延長にあるものだったから。
だからこそ今の新生少年ハリウッド達には自分達の力で輝ける強さを持って欲しかったのではないかと。
「社長」は永遠にいつでも「アイドル」を守ってやることはできない、それを身にしみている彼は、例え自分がいなくなったとしても少年ハリウッドが生き残れるようにしたかったのでしょう。
そのやり方はすごく不器用で、厳しい芸能界では技術はもちろんビジネス面では少し弱くなるし足りない所がある。

けれども心の在り様として私は彼のそういうところを愛してやまない。ものすごくロマンチストな考えではありますが。
だけど愛する者や物を自分がいなくても生きていける強さを、その人や物の中に宿す手伝いをするということが
ほんとの意味で守るという事の一つではないかと思います。

 

 

<エゴが世界を包み込む>
だけどその彼の在り様は別に「いい人」だからいうわけではありません。
むしろ少年ハリウッドに対するものは深く重く、危うげなものでもあります。
(別に描写があるわけではないですけど彼は少ハリのためなら死ねるな、と感じますね。)
ただ、桜木広司のエゴである「少年ハリウッド」を永遠のものにしたいという目的を達するためには、
結果的に彼らのアイドルとしての「自主性」を芽生えさせなければならなかったんですよね。
それがよくあらわれているのが
「誰かの 何かために存在するエゴイスティックな気持ちってね、極めると世界のすべてを愛すってとこにまでたどり着くんですよ。」
という彼のセリフだなと思います。

 

 

少年ハリウッドの未来>
完全に妄想なんですけどこれから少ハリが大きくなっていく段階で、組織が肥大すると
どうしても社長やアイドル達の意思ではどうにもできないことが起きうるし、
細部まで行き届かなくなっていったりするのかぁと考えたりもします。
今は小さな組織だから社長のディレクションが伝わりやすいですけれども。
もしかしたら彼らを守るため、大きくするために分裂することがおきるかもしれない。
例えば桜木社長と早水海馬の考え方がずれていくとか。
その辺も三期があるのであれば見たいところ。
だけど早水さんは桜木社長のこと、好きすぎるのでないかなぁ。
仲間同士だからこそ対立するときはドラマ性あるけどうーん、どうだろう?
この辺は好き勝手に妄想するだけ楽しいです。

 

 

<素の自分と期待される自分>
アイドルがアイドルになる自主的な意思について散々語ったんですけど
この物語では同時に誰かに期待される自分になり続けることを肯定しているんですよね。
個人的には私はその二つのバランスがとれており、時として溶け合っている状態がベストであるんだろうなと思います。