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神様、その嘘は愛ですか?~PK ピーケイ~

 

PK ピーケイ [Blu-ray]

留学先で悲しい失恋を経験し、今は母国インドでテレビレポーターをするジャグーは、ある日地下鉄で黄色いヘルメットを被り、大きなラジカセを持ち、あらゆる宗教の飾りをつけてチラシを配る奇妙な男を見かける。
チラシには「神さまが行方不明」の文字。ネタになると踏んだジャグーは、「PK」と呼ばれるその男を取材することに。
「この男はいったい何者?なぜ神様を捜しているの?」しかし、彼女がPKから聞いた話は、にわかには信じられないものだった。
驚くほど世間の常識が一切通用しないPKの純粋な問いかけは、やがて大きな論争を巻き起こし始める―。 amazon 商品紹介より


前作、「きっと、うまくいく」のラージクマール・ヒラニ監督と俳優のアーミル・カーンが再びタッグを組んだ作品。
これもまたものすごく面白かった!「きっと、うまくいく」は熾烈な競争社会の中で友情や恋愛、夢を追いかける事のエンタメをストレートに描いたものでで
もう、絶対にみんなみてくれよ~!ウルトラハッピーになる作品だから!!とおすすめしたい。
そして今回のテーマは宗教で、人によっては分かりにくく、扱いが難しいにもかかわらず、やっぱり超一流のエンターテイメントになっていて、あったかい気持ちにさせられました。

 

きっと、うまくいく [DVD]

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<告発者PK>
さて、W主人公の一人のPK。しょっぱなからネタバレすると宇宙人。彼は地球の常識がまったくわからないんですが、これが「宗教」というメスを入れにくいところに、スッと入ることができる役どころなんですよね。
なんでかというと、そこにバイアスがかからないから。彼の宗教に投げ抱える疑問すべてが、子供が大人に問いかけるような純粋な問いかけとして見てる側が受け止められる。
例えばインド以外の外国人でもいいのでは?となるけど、それならその国の事や宗教を勉強しなよ?と告発される要素が大きくなるのではと。
けど宇宙人というあまりにも自分達と違うファンタジーな存在だと、まぁわかんないならしょうがないよね?となるんですよね。
これって、タイムスリップものとか異世界トリップとある意味同じ構造をもっていると思います。
その「世界」にとって「異物」であるがゆえに、その「世界」のルールを疑問視することに違和感がない。
わかりやすくいえば戦国時代に普通の女子高生がいって「こんな殺し合いや人買いがある世の中間違ってる!」と言っても別に変ではないですよね?

 

それと同じように、PKがなぜ地球の人は服を着てるの?と疑問を持ってもおかしくない。なぜなら彼がいたところは服を着なくてもいいところだったから。
そしてPKの故郷では言葉を使わず心でコミュニケーションがとれるらしく、だからすれ違いや勘違いなんか起きない。
なんていうかPKのいる星の人々はおそらく「隔たり」がないんですよね。だけど地球人は違う。たくさんの「隔たり」があって、それが一つの文化や個性や宗教でもあったりします。
まず、人と人を「隔てる物」として人は「衣服」を着る。そして世界には「言語」が多種多様あり「宗教」の違いから様々な神様がいたりする。
そしてその「隔たり」は時として争いを生んだり、その「隔たり」を利用して利益を得ようとする人が出てくる。
それを告発する者としてPKは鋭く、そして優しい眼差しを地球人たちにむけていきます。
けど、その眼差しの切り込み方が鮮やかすぎてひやひやするものでありました。宗教の金儲けや矛盾についてのあれやこれやをみると。
これ、ほんちにインドで上映して大丈夫だったの!?と思いました。
けど、インドでヒットを飛ばしたのを見ると、私が思っている以上にインドは宗教を穏やかに受け止めているんだろうなぁと思います。

<嘘や虚構という名の愛>
裸の王様にあの人服着てないよ?といってしまった子どものように、宗教の抱える矛盾やそれが引き起こす悲劇を告発したPKですが、宗教自体にはすごく愛があふれている。
けど私はPKが宗教を使って金をむしり取る教祖をやり込めていくのを快感を覚えた一方で、その教祖が言った言葉で救われた人は確かにいるのでは?とも思ったんですよね。

 

この世界にはどうしようも出来ない残酷な事があって、それを直視しつづけるのがつらい事もある。すがる言葉も時として必要。それが一時のまやかしだとしても。
PKはおそらくですけどそんな宗教の必要性は認めていてだけど、そのために神様を利用して人を傷つける「言い訳」する事は、ほんとに許せない人。
これは、PKが映画の中で身をもって経験するある悲劇的な出来事からの考えだとは思いますが。

 

そんな彼が最後にある嘘を大切な女性につくのがほんとに良かった。
この「嘘」ってのはある意味では宗教や神様そのものであり始まりなんですよね。例えば、お守りなんかがただの紙だとしても、神様の加護があると思えばそれが心の支えになったりする。
それって「嘘で虚構」なんだけどそこから勇気や守られているんだと信じているなら「嘘」じゃないんですよね。確かにそこに神様は居る。
うーん。ちょっと説明するが難しくてうまく伝わってないんですけど。
好きな女性のためについたその嘘は、それが嘘だとばれたとしてもきっとずっと彼女を支え続けていく。
その嘘が愛に基づいたものだから。誰かを傷つけるためのものではなく。
ここで、あぁ、宗教の本質はほんとうは「愛」にあるのでは?と宗教に疎い私は思いました。
複雑化した世界だとそれが見失ってしまうけど、それをこの映画に出てくる人たちは見つけていく。
宗教や国境を越えて。
心が最初から通じ合うから嘘をつく必要がなかったPKが、最後についたその「嘘」はまぎれもなく「愛」でした。