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恩賞の行方の裏には罪と罰~おんな城主直虎45回~

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前回、家康への暗殺者を捕えた万千代。
この働きが認められ、家臣の一人として末席を与えられました。
今回はこの万千代の「功」から始まっていく悲劇のプロローグを見てるようでつらかったです。
当たり前の事ですが戦国において誰かが「恩賞」を勝ち取るとき、その陰には他の誰かが負けて散っていく。
Twitterでもよく感想で見かけましたがその「恩賞の彼方」に万千代が見たものが、今までの井伊家の歴史を圧縮したような悲劇というのなんともいえません。
自分が功をたてた結果、自分達が今川から強いられてきた被害者から加害者側にまわっていく。
もちろんそれは万千代になんの瑕疵もないけれど、その痛みを知るのと知らないのじゃだいぶ違う。
誰もが生きていく限り、被害者であり続ける事も、加害者であり続ける事も許していかない構図の厳しさが出ていたように思います。

<Go For Broke!>
武田の内通で処罰を受けた武助の一族。
が、それだけにとどまらず罰は岡崎衆への連帯責任へと広がりました。
もちろん不満がでますが信康は彼らに頭を下げます。
だからこそ武功をあげて、浜松勢を見返してやろうではないかと。
そこで一致団結した彼らが戦場で勇敢に戦ったことがナレーションではいりますが、ここで思わず涙ぐんでしまいました。
というのもここで「第442連隊戦闘団」をい思い出したからなんですが。
山崎豊子さんの作品「二つの祖国」でもでてくる、日系アメリカ人の部隊の事です。
ものすごく活躍しまくった部隊なんですよね。
当時差別を受けていた彼らが、だからこそアメリカへの忠誠心をアメリカ人よりも証明していかなきゃいけなくて勇敢に戦い、戦争の最前線に立たなけれなならなかったなど、かなり考えさせられました。
語りだすと長くなるのでここでは割愛させてもらいますが。
この自分がしてない事でも、そこに所属しているというだけで、不当な扱いを受けてしまうのはかつての万千代も同じです。
だからいって信康達がルサンチマンに陥らず、誰よりも徳川のためにと命を賭して戦っていく姿はすごく眩しいしそれだけで涙が出てしまいます。
まぁ、たった一文のナレーションで実際に描かれたわけではないのですが。

 

二つの祖国 第1巻 (新潮文庫 や 5-45)

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 <見えぬ信長の真意>
家康の側室に男子が誕生しました。名は長丸、後の二代将軍秀忠です。
浜松が歓喜に沸く中、焦った瀬名は信康に側室を置き、跡取りとしての基盤を固めようとします。
側室を置き男子が生まれたとしても、信康の正室である篤姫が母であると、約束することで織田の顔もしっかりたてようとしました。
が、これが悲劇のフラグの一つとなってしまいます。
信長の真意がわからないためどうにも推量となってしまいますが、だんだんと大きい勢力になりつつある徳川の力をそぐために、
信康を取り込もうとしているみたいなんですよね。
これは信長に「徳川勢力の力を落とす」という目的があり、彼が実行しようとしたことは計画はまず下記にあるAプラン。

A信康を取り込む事。
B信康ごと潰す事。

今回、のプランでは、茶器を授けようとしたり官位を持ち出したりとしました。

しかしだめになったのでBに移行します。

 

この計画を回避するには、果たして信康はいかにふるまえばよかったのか?
となるとかつての政次のように裏切りの態度を取り続けるる二重スパイのような態度をとったり、
直虎がいったように女だとなめてもらった対応をしてもらったほうが、動きやすいを考え、馬鹿殿を演じればよかったのでしょうか?
しかしながらこれだけ好青年の信康だからこそ家臣達が屈辱をあじわっても、ついてきたのも事実。
そう考えると、岡崎はヒールを演じてた政次不在の井伊家ともいえるのでしょう。

 

最初にも書きましたけど、この井伊家の悲劇を圧縮して万千代に追体験させています。
信長に脅され究極の選択を選ばされた酒井は、かつての政次。
信康を葬ろうとする信長は、直虎の優秀さゆえに殺さなければならないとした寿桂尼
そんな井伊家を見殺しにしてきた家康が、今度は我が身を切り捨てていかなければなりません。
それは武家としていきていれば仕方ない事。だけどそのルールを人に強制すればまた自分も縛らなければならない。
その自覚が、そうやって生きてきた家康にあればこそ

於大の方が「それは通らない。」というセリフにほぼノータイムで理解することができるのです。
というか、このシーンめちゃくちゃ良くて「子供を殺せ」と冷酷なことをいいつつも慈母らしさがありました。
人間をすてた冷徹人間ではなく、あくまでにんげんだからこそ!というような雰囲気のある於大の方でした。
(あと、家康の部屋に入る前に一度目をつぶって覚悟を決めるようなとこも)

<顔を見せぬ徳姫>
信長の真意がみえにくいと書きましたがそれ以上に隠されて書かれているのが信康の正室であり、信長の娘の徳姫。
顔みせしてないので真意がみえにくいんですよね。
といっても信長への手紙から信康を裏切っている様子も不満があるようにも見えません。

夫婦仲が悪いような様子も感じられませんでした。
それを「徳は夫思いじゃのう。」といってましたが、裏を返せば徳は父思いではないよね?といった意味にとれます。
前にも武家の女性は外交官でありインテリジェンス・オフィサーみたいだなと書きましたが、
そう考えると徳姫は外交官として失敗してしまったのかもしれません。
本国(織田)の意図を図り損ねたいいますか、両家の立場にたつ彼女の二重スパイ性はだんだんと徳川よりになったのかもしれません。
この辺難しくて、取り込んだ地域の娘(武田の元家臣)ではなく織田から側室を探すという手もありましたが、まさか父親がそんな事を考えるとは徳姫は思い至れなかったのかもしれません。
というか前者は多分普通にあった事だったとはおもうんですけど、そこらへんどうなんでしょうね。
それを裏切りだと信長は考えたのか真偽は今のところ闇のままです。

<動いても、動かなくても>
前回、喧嘩になった万千代・直虎ですが今回の事件で二人は何を感じたのでしょうか?
万千代は武功をたてることで、直虎はお家騒動に巻き込まれたくないからと側室を井伊谷から出さぬ事はこの悲劇の一端を担っています。
二人ともやり方は違えど、何かのためにとやったことで、それでも大切なものが手のひらからこぼれ落ちていこうとしています。
二人とも井伊家の人間なので傍観者の立ち位置となり、それゆえに「井伊家」自体が傷ついたわけではありませんが。
何かを成そうとしてもしなくても生きていくという事は誰かを傷つけうる事がある、このルールから何人も逃げられはしない。
それについて二人がどのように受け止めていくのか見守りたいと思います。