シェヘラザードの本棚

物語同士のつながりが好き

天才(もしくは凡人)がもたらす栄光と影~ソーシャル・ネットワーク~

ソーシャル・ネットワーク [Blu-ray]

あのフェイスブックを作った奇才、マークの話。
が、このマークがかなりくせのあるキャラ。思考回路は超論理的だが感情面が幼児的。彼女とのデートシーンにこの二面性が顕著に顕れている。会話は完全にディベート
もちろんマークはふられ、おもしろいことに彼女への腹いせでやったある事がのちのフェイスブック誕生の第一歩となる。

 

コミュニケーションが重要な人間関係において致命的。にもかかわらず、そんな彼が人々をコネクトするインフラの創始者というのが面白い。

その後、友人エドゥアルドと成功の道を走っていき、もう一人の天才ショーンと出会いさらにSNSの頂上へと駆け上がって行く。 

 

だがここで単なる成長物語では終わらない。栄光と引き換えに、人々の社会的な結びつきという名のインフラを作った彼が、彼自身の個人的な絆を失って行く。 

その過程がほんと秀逸。人生のワンステージが上がった側のマークとおいていかれた友人。そして彼を引き上げたシェーンの関係性は、あぁどこにでもあるなぁ、と感じられた。
マークにとってショーンは見たこともない景色を一緒に見れる人なので、その手を掴まずにはいられない。
そしてそこに「未来」をみてしまったら、「現在」の関係性を自覚的にしろ無自覚にしろ置いていく事になる。

 

 

別世界にいる奇才かつ、超成功者の話に感情移入しながら鑑賞できたのがすごいよかった。 
あんなほぼ論理だけで世界を認識している(普通の人はもっと感情面があるような?)マークの孤独を浮かび上がらせ、シンパシーを感じさせるのもよかったです。

それにも才能を短期間で時価250憶までに生み出すアメリカのビジネスの土壌に圧倒されました。
といってもアメリカだけじゃないですね。ネットの海はあらゆる可能性があって。開拓という意味では人類にとって残るフロンティアは宇宙とネットワークかもしれない。

そしてこの映画の雰囲気がなんか好きです。画面やストーリー自体はたんたんとしてるけど、飽きさせないなぁ。
見終わった後、じわじわきます。

 

<同じ目的を持つ者達の関係性>

実は、この感想はだいぶ前に自分のメモとして書きためていたものです。
なんで掘り返したかのかというと最近、クリントイースト・ウッド監督の「ジャージー・ボーイズ」を見たからなんです。
両作品とも成功していく過程で得る物と失う物が描かれている。
組織はアイディアマン、才能の発信者、その才能についていこうとする者、資金をかき集める者、さまざまな人がそこにはいて科学反応を起こしながら、何かを世の中に送り出していく。
その中でも「生み出す人」と「場や資金を提供する人」の関係性のバランスをとるのが難しいんですよね。この二つは本来なら補完関係になりうる。だけど性格の相性が才能の相性とぴったり合うわけじゃない。そして、どちらか一方の力関係が大きくなりすぎたりすると、一気に崩れてしまう諸刃の刃。

才能だけがその人のすべてじゃないように、プライベートな部分だけがその人の本当の姿というわけじゃない。

だけどその二つが綺麗に重なった時はきっと何物にも変えられない幸福がある。

 

 なんだか、ソーシャル・ネットワークの感想から離れていきました。ジャージー・ボーイズとも少しずれますが。

最近、志が同じで才能の違う者同士の幸福な関係性はなんだろう?と考えてるからなんですよ。主に直虎(と政次)を見てるからなんでしょうけど。ちょっとこの辺は色んな物語のストックをためていきたいと思います。