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物語同士のつながりが好き

Mr.ハーレムの幸せの行方。メインヒロイン不在。~源氏物語~

 

源氏物語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

 周りに、「光源氏」のことどう思う?と聞くと、「あぁ~。なんかかなりプレイボ-イって感じで嫌だよね。どんだけ女の人泣かすの?」とか

「いやいや、あの時代はあれが普通だし。むしろ生活面倒みてるからいいんじゃない?」と賛否両論な男性でした。
私はというと彼のそういった行い自体には興味がなくて、読み終わったときには「え?なんで、主人公は幸せにならないの?」と疑問符がいっぱいでした。
なんていうかですね、金も名誉もあってハンサムで女性にも困らない。なのに全然幸福感を感じないんですよ。いちよ自分が一番好きな女の子(紫の上)を正妻にしてるというのに。

このなにもか物質的に満たされているというのに虚無感を抱えていたり、どこか救われたいと思っているような雰囲気は、アメリカの都市文学?的というか。今、読み直すと
すごい「華麗なるギャツビー」とかを思い起こさせるんでよ。そのつながりで村上春樹さんの主人公もこれに近い雰囲気を感じます。Siaの「Chandelier」もパーティガールの空虚な感じと刹那的なでてますね。


Sia - Chandelier (Official Video)

 

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

 

 なんで、こうも幸せ感がないのかなぁ?と思うとヒロインの紫の上達ががまったくもって光源氏の精神性やコアの部分に関わってこないからなんですよね。

彼は、母親の幻影を追い続けるマザコン気質でいろんな女の人にそれを求め続けるといわれたりもしますが、その問題の解決に深く踏み込んだヒロインって一人もいないんですよね。
確かに彼は現代から見れば不誠実な対応をとっているとみる人がいて、それが正しいと仮定するならば、じゃぁ、本当に彼の幸せを本気で考えたヒロインがいるのか?
って聞かれた時、とっさに答えられないんですよ。これは、一夫多妻という社会システムが、一人のヒロインを選べ!!という圧力をかけない事が拍車をかけている気がします。
それの賛否はおいといて、これは光源氏が求める「愛」につきまとう「選別作業」をおこなってこなかったからだと思うんですよね。
誰かを特別だと思うことは、他の誰かを選ばない事と同意なので。

かといってじゃぁ、ハーレムは人を幸せにしないのか?というとそれも違う気がします。ただ、光源氏には一夫多妻は、相性が悪かったとしかいいようがないです。
まぁ、仮にメインヒロインが彼にあらわると物語自体が終結してしまうんですよね。何人ものいろんなヒロインをだすには徹底的に、彼の内面に踏み込ませないように清少納言さんは注意をしてたのではないかと思います。本質的に誰のものにもならないなら、女性側からすると永遠に恋をしていられるという幸せのような不幸を体験できます。
そもそも「金も名誉も権力もある、顔もいいし、女の人はべらせてウルトラハッピー!!うぇーい!!人生最高!!」という主人公にするとそれはそれ楽しいけど、やっぱり影のある美男子だから女性側から人気があると思いますし。

まぁ、そんな事をちいさいころから考えてきたので、なぜかこのハーレム構造をもつ作品を興味深く観測してきたところがあります。とりわけ男性向けライトノベルがこの傾向があるので
よく読んだりアニメをみたりしてました。今映画をやっている映画の「ソードアート・オンライン」なんかは、明確にメインヒロインの女の子がいて、
あとのサブヒロインはボンドガールみたいに基本的にはその場限りでどんどん増えていくという感じですね。
これは、運命の特別な人はいるんだけど他の子からもモテるという一つの楽園です。
このパターンは少女漫画のほうが見かけやすいかと。男性向けは、意外にだれが最終的にメインヒロインになるかで厳しい競争をかんじるとこがありますが
女性向けは、だいたい運命の相手はわかりやすく決まっている気がします。

 うーん。けど、ハーレムでウルトラハッピーな話も見てみたいんですよね。主人公もヒロインズもみんな幸せでこちら側も納得できるような。

あと主人公に惚れる動機が弱くて、女の子が魅力的でかつ彼女たち同士が仲がいいと、もう主人公いらなくない?もう女の子同士で幸せになろう!!
とかわがままな事思っちゃいますねぇ。あー、どんどん注文が・・・・。
まだまだ、Mr.ハーレムの幸せ探しは続きそうです。

 

おまけ
源氏物語のなかでは。葵の上が一番好きなヒロインです。年上ツンデレクール美少女。彼女といるときが一番、光源氏が「普通の男の子」って感じがしました。
個人的に。あぁ・・・。だから作者から途中退場させられたんだ(涙)と思うことにします。